
まずは、先月頭に発表され、Yahooニュースのトップにも出ていたニュースをご紹介。
「家計のなかで携帯料金支出の割合が他国と比べて高いため、これを改善することで消費が他に周り、景気を良くしたい」という触れ込みで「携帯電話料金や携帯端末の販売方法に問題があるため是正が必要である」と、ここ数年、政府はケータイ業界に注意喚起を行っています。
内容は主に4つ
- 1.スマホの本体価格に相当するレベルの行き過ぎた値引きを行うこと
- 2.自前で販売した端末が他キャリアのSIMで使用できないようSIMロックをかけ、キャリアが端末と通信(回線)の両方を抱き合わせで販売すること
- 3.販売代理店(各キャリアショップ)側が、スマホを販売する際、その料金(売り方)を販売代理店ではなくキャリアが決めてしまっている状況にあること
- 4.キャリアで行われる下取りサービスで回収したスマホが日本の国内市場にほとんど流通していない可能性が高いこと
これらはすべて、独占禁止法上問題がある可能性がある、ということですが、ケータイ業界からもさほど本気トーンの反発が上がってこないという事は、業界側にも思い当たる節があるということでしょうか。しかし、消費者目線でみると、この話で誰が得をしていて誰が損を被っているのか、そしてその規模感がどの程度なのかが見えてこないと、このニュースはケータイを使う側にとってあまり価値がありません。
そこで、この問題によって得する人・損する人を以下表にレイアウトしてみました。
現状 | 得している人 | 損する人 | 影響 | ||
1 | スマホの本体価格に相当するレベルの行き過ぎた値引きを行うこと | → | 通信キャリア | MVNO事業者 消費者 |
格安SIMを提供するMVNO事業者がシェアを拡大できず、消費者はインフラを利用する上での選択肢が少なくなる。 |
2 | 自前で販売した端末が他キャリアのSIMで使用できないようSIMロックをかけること、加えてキャリアが端末と通信(回線)の両方を抱き合わせで販売すること | → | 通信キャリア | MVNO事業者 消費者 |
1度、通信キャリアで回線契約したら消費者はその後他キャリアへ移行しづらくなり、さらに端末の買い替えコスト、加えて通信会社の切り替えコストが高くなる。 |
3 | 販売代理店(各キャリアショップ)側が、スマホを販売する際、その料金(売り方)を販売代理店ではなくキャリアが決めてしまっている状況にあること(※1) | → | 通信キャリア | 販売代理店 消費者 |
販売代理店による自由な価格設定ができない為、様々なしがらみの影響で端末が売れなくなれば企業として立ちいかなくなる。加えて、競争によるサービス品質向上が阻害されて消費者は選択肢を失う。 |
4 | キャリアで行われる下取りサービスで回収したスマホが日本の国内市場にほとんど流通していない可能性が高いこと | → | 通信キャリア | MVNO事業者 消費者 |
下取りされたスマホは新品の最新機種よりも大幅に安価で提供できる為、通信費や端末購入コストを大幅に落とすことができ、潜在する消費者ニーズを多く満たせる。格安SIMを提供するMVNO事業者もシェアを拡大できる。が、現実は逆。 |
1
現状 | スマホの本体価格に相当するレベルの行き過ぎた値引きを行うこと |
得している人 | 通信キャリア |
損する人 | MVNO事業者 消費者 |
影響 | 格安SIMを提供するMVNO事業者がシェアを拡大できず、消費者はインフラを利用する上での選択肢が少なくなる。 |
2
現状 | 自前で販売した端末が他キャリアのSIMで使用できないようSIMロックをかけること、加えてキャリアが端末と通信(回線)の両方を抱き合わせで販売すること |
得している人 | 通信キャリア |
損する人 | MVNO事業者 消費者 |
影響 | 1度、通信キャリアで回線契約したら消費者はその後他キャリアへ移行しづらくなり、さらに端末の買い替えコスト、加えて通信会社の切り替えコストが高くなる。 |
3
現状 | 販売代理店(各キャリアショップ)側が、スマホを販売する際、その料金(売り方)を販売代理店ではなくキャリアが決めてしまっている状況にあること(※1) |
得している人 | 通信キャリア |
損する人 | 販売代理店 消費者 |
影響 | 販売代理店による自由な価格設定ができない為、様々なしがらみの影響で端末が売れなくなれば企業として立ちいかなくなる。加えて、競争によるサービス品質向上が阻害されて消費者は選択肢を失う。 |
4
現状 | キャリアで行われる下取りサービスで回収したスマホが日本の国内市場にほとんど流通していない可能性が高いこと |
得している人 | 通信キャリア |
損する人 | MVNO事業者 消費者 |
影響 | 下取りされたスマホは新品の最新機種よりも大幅に安価で提供できる為、通信費や端末購入コストを大幅に落とすことができ、潜在する消費者ニーズを多く満たせる。格安SIMを提供するMVNO事業者もシェアを拡大できる。が、現実は逆。 |
※1 これは既にかなり大きな影響があり、1次代理店としてキャリアと契約する規模の大きな企業は別かもしれませんが、同50名未満程度でしょうか、12次代理店として存在する企業の多くは厳しい環境に置かれているとされています。
といった具合で、通信キャリアに対して向けられている注意喚起なのですべて通信キャリアが得をしているのは当然ですが、このように、今回の注意喚起は、消費者・MVNO事業者・販売代理店にとっては非常に大きな損失があったこということが見えてきます。
自治体や政治家が税金を無駄遣いするとすぐ大きな話題になりますが、損失を被るのが他でもなくほぼすべての日本人という意味では、この件ももう少し話題になっても良いのに、とは感じてしまうところです。。