4月16日、AppleとQualcommは、両社の間で行われている全ての訴訟を取り下げ、全面的に和解した事を発表しました。
この和解に当たり、Appleは、Qualcommに対して、推定70億ドル(約7,840億円)に上るロイヤリティを支払ったとされます。
さらに、AppleとQualcommは2019年4月1日に遡って有効とする6年間のライセンス契約を締結しました。
この契約には、2年間の延長を可能にするオプションが含まれ、また、複数のチップセットの供給に関する契約も含まれているとされます。
このAppleとQualcommの和解とライセンス契約締結の陰で、これまでAppleと共に5Gモデムの開発を担ってきた「Intel」が、スマホ向け5Gモデム開発からの撤退を発表しています。
これは、Qualcommからの供給を受けられる事になった事自体はAppleにとってメリットである事は間違いありませんが、一方では、5Gモデムについて複数の選択肢は残せなかった事を意味し、今後のAppleは、Qualcomm、Intel以外の第3のサプライヤーが登場しなければ、チップ供給を100%Qualcommに依存せざるを得ません。
Appleがモデムの自社開発をすでにスタートさせているとの報道もありましたが、iPhoneに求められる更新質のモデムを1~2年ですんなり開発・製造できるとは思えませんので、当分の間、AppleのQualcomm依存は続きそうです。
ただ、そんな状況下であっても、足元を見れば、Qualcommから5Gモデムが供給される事は朗報には違いありません。
2019年はおろか、2020年でも5G iPhoneの登場は絶望的と言われていましたが、Qualcomm製モデムの供給により、5G iPhoneの登場は早まったのでしょうか。
それは、今後の状況や展開を見て見なければ分かりませんが、少なくとも、これまでIntel製のモデムを想定して設計・開発していた5G モデムを、Qualcomm製モデムに半年で切換え、テストを行い、実機を発売するなどという芸当は到底不可能です。
では、2020年モデルならどうでしょうか。
通常、スマートフォンの開発は1年半~2年前ぐらいからスタートすると言われていますので、2020年9月の発売を想定すると、2019年春の現時点がちょうど1年半前となり、すでにギリギリのタイミングである上、Intelモデムありきでの開発から、Qualcomm製モデムへの切換えは相当に手間がかかりそうで、2020年モデルでさえ微妙と言われています。
しかし、Appleとしては、すでに限定的ながら5Gスマホを発売しているAndroid陣営に対して、2020年モデルでも対応できないとなると、単に販売面で不利になるだけでなく、AppleやiPhoneといったブランドにも傷が付きかねないため、必死の突貫作業で発売に漕ぎつけるのではないでしょうか。
例えば、iPhone XRのように、2020年9月には最新4Gモデルを発売しておき、その際に、2~3カ月遅れでの5G iPhoneの発売を予告し、時間稼ぎをする「手」も使えるかもしれません。
いずれにしても、「和解」と言いながら、70億ドルもの痛手を被ったAppleが、実質的には負けたのは事実でしょうし、そうしてまで手に入れたQualcomm製モデムの供給をもってしても、2020年モデルに間に合うのか微妙な状況、さらに、2019年の新型iPhoneの販売も復調する保証はなく、Appleの苦悩はまだまだ続きそうです。
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